2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

私の男(‘13) 熊切和嘉 <「共生関係」―― その凝結する「赤」の溶かし難い粘着力>

1 禁断の小宇宙で安寧を保持する男と、その男を独占する少女 マグニチュード7.8、震度6の烈震が北海道・奥尻島を襲った。 死者・行方不明者含めて230人の犠牲者を出した、所謂、「北海道南西沖地震」である。 1993年7月12日のことである。 そ…

オカンの嫁入り(‘10) 呉美保<「残り時間」が「凍結した時間」を溶かし、変容させていく物語の出色の出来栄え>

1 深い情愛で結ばれた「母と娘」の紆余曲折の物語 ―― その1 「そこのみにて光輝く」(2013年製作)を観て、圧倒的な感動を受け、この呉美保監督の他の作品を観たいと思って出会った映画が、この「オカンの嫁入り」である。 「そこのみにて光輝く」と同…

それでも夜は明ける(‘13) スティーヴ・マックィーン<極限状況下に置かれた男の内面に入り込んだ映像の出色の着地点>

1 「自由黒人」の名残を留め、自己の尊厳に拘泥する「黒人奴隷」の受難 観る者を感動させようと思えば幾らでも可能な映画を、スティーヴ・マックィーン監督は敢えて拒絶した。 どこまでも、主人公の内面世界に入り込み、「自由黒人」であった主人公が経験し…

少年は残酷な弓を射る(‘11) リン・ラムジー<「分離ー個体化」し得ずに、倒錯的に捩れ切った少年の自己完結点と、その崩壊感覚>

1 「ママだけの部屋」に変換させる母を見透かす幼児の拒否反応 私にとって、リン・ラムジー監督と言えば、唯一、鑑賞した「ボクと空と麦畑」(1999年製作)である。 自分が犯した罪で懊悩する少年の心理描写で埋め尽くされる映像の切なさは、多分、一生…