ファニーゲーム('97) ミヒャエル・ハネケ <暴力の本質的な破壊力についての、冷徹なまでに知的な戦略的映像の極北>

 夏の長期休暇をとって、湖畔の別荘へ向かうショーバー一家。

 ヨットを牽いたワゴン車内には、夫のゲオルグ、妻のアナの夫妻と、一人息子のショルシと愛犬が同乗している。

 奇妙な「事件」が起きたのは、セーリングの準備をしている父子の留守のときだった。

 夕食の支度をするアナの元に、唐突に、肥満気味の青年が訪れて、「卵を分けて欲しい」と言うのだ。

 ペーターと名乗るその青年は、4個の卵をもらって帰ろうとした際、玄関前で卵を割ってしまい、図々しくも代りの卵を要求するが、その間にも、あろうことか、アナの唯一の携帯を台所の水の中に落としてしまう始末の悪さ。

 当初、礼儀正しい態度を見せていたペーターの厚顔さを目の当たりにして、次第に神経を苛つかせるアナは態度を硬化させていくが、そこに、もう一人の青年が出現することで、事態は一気に暗転していく。

 もう一人の青年の名は、パウル

 痩身のパウルは、相棒をペーターと呼ばず、「デブ」と言い捨てていく態度を見れば、特段に悪相とは思えない二人組のリーダーがパウルであることが了解し得るだろう。

 アナを挑発するパウルの言動が、態度を硬化させていたアナの心に、経験したことがないような恐怖感が加速的に分娩されていく。

 まもなく、愛犬の鳴き声で、別荘での異変を察知したゲオルグが、息子のショルシを随伴して帰宅して来た。

 しかし、二人の不気味な青年を相手に手こずっている妻を見て、夫のゲオルグは仲裁に入ろうとしても困難であることを実感する。

 
(人生論的映画評論/ファニーゲーム('97) ミヒャエル・ハネケ <暴力の本質的な破壊力についての、冷徹なまでに知的な戦略的映像の極北>)より抜粋http://zilge.blogspot.jp/2011/09/97.html