陽春の小金井公園・2012年

私にとって、都内で最高の桜名所を一つ挙げるとしたら、八王子市にある「多摩森林科学園」に尽きる。

ここは「桜保存林」と銘打っているだけに、多種多様な桜のリレーが観る者を歓喜させ、圧倒する。

ただ、いつ訪園しても混雑極まりないところが、「桜好き」の私をして、このスポットに足を運ばせる強力な推進力になっていないというのが本音。

それでも、懲りずに毎年ここに足を運んでしまうのは、人、人、人の「慢性渋滞」を掻き分けてもなお、このスポットの求心力の抜群の高さなのだろう。

どうしても、この時期は、桜見の訪園者で、何処も彼処も人群れの飽和状態になるので、妥協せざるを得ないところ。
 
ところが、桜が散って新緑になる頃に、都内では、「もう一つの桜名所」がその存在感を増していく。

4月の中旬から下旬に満開になる、サトザクラの饗宴が待っているからだ。

その場所は、環境省所管の国民公園である新宿御苑と、都立小金井公園である。

さすがに、国営昭和記念公園立川市昭島市)には及ばないが、都立公園最大の広大な敷地(日比谷公園の約5倍で、小平市西東京市武蔵野市にまたがる)の中に、約1700本の桜に交じって咲くサトザクラの美しさは、ソメイヨシノの時期と打って変わって、「慢性渋滞」から解放されることで味わう情趣を堪能できるのが一番良い。

「園内には、ヤマザクラサトザクラソメイヨシノなどのサクラが約1700本植えられ、そのうち『桜の園』では430本が一か月にわたり春を彩ります。園内のサクラは昭和20年代末期より順次植えられたもので、今ではお花見の名所として、大いに賑わいを見せております。 また、隣接する玉川上水の堤のサクラ並木はヤマザクラが中心で、当初は将軍吉宗の時代に植えられました。大正13年に『名勝』の指定を受けています」

 これは、都立小金井公園サクラを紹介する、東京都公園協会によるHPの一文。

 また、ここには、「江戸東京たてもの園」という、有料の野外博物館が移築されているところも魅力になっている。

以下、「江戸東京たてもの園を紹介する、都立小金井公園のHPの一文である。

江戸東京たてもの園は、1993年(平成5年)3月28日に開園した野外博物館です。都立小金井公園の中に位置し、敷地面積は約7ヘクタール、園内には江戸時代から昭和初期までの、29棟の復元建造物が建ち並んでいます。当園では、現地保存が不可能な文化的価値の高い歴史的建造物を移築し、復元・保存・展示するとともに、貴重な文化遺産として次代に継承することを目指しています」

 江戸時代から昭和初期までの復元建造物を見ると、和洋折衷の当時の風情が楽しめて、一見の価値がある。

 それは、この公園が、単に桜名所の範疇に収斂されない懐の広さを醸し出してくれるのである。


(思い出の風景   陽春の小金井公園・2012年  )より抜粋http://zilgf.blogspot.jp/2012/04/blog-post_28.html