2011-01-23から1日間の記事一覧

「陰謀論」の心理的風景

1 「完成形としての人間」の能力を前提とする認知の過誤 人間は不完全な存在体である。 目途にしたものを、最後まで、且つ、完璧に遂行し得るほどに完全形の存在体ではないと言い換えてもいいかも知れない。 そんな私は、「陰謀論」花盛りの文化の退廃性に…

源氏物語('51)  吉村公三郎 <母性的包容力の内に収斂されていく男の、女性遍歴の軟着点>

日本近代史の中で、「源氏物語」は受難の文学だった。 「庶民感覚から遊離した『有閑階級の文学』」という理由で、プロレタリア文学から批判の矛先を向けられ、「ごく普通の人生を生きる者としての人格性の欠如」という理由で白樺派文学から批判される始末。…

大人は判ってくれない('59) フランソワ・トリュフォー <「見捨てられた子」の負性意識の重量感 ―― 「思春期彷徨」の推進力>

「僕がいないと父なし子だ」 「その文句は聞き飽きたわ。うんざりだわ」 「子供が嫌なら、孤児院にやるわ。私も静かにしたいわ」 これは、主人公のアントワーヌ少年が、夫婦喧嘩を耳にしたときの会話。 更に以下は、宿題をさぼって、教師に町で見つかって説…