2011-03-02から1日間の記事一覧

夜の河('56)  吉村公三郎 <「色彩が彩る純化した映像による実験作」という隠し味>

本作は、三つのシークエンスによって説明できる映画である。 ―― 一つ目は、男と女が初めて結ばれた旅館でのシークエンスだが、このシークエンスまでの経緯を簡単に説明しておく。 阪大教授竹村が、桜見物で唐招提寺を訪れた際に、京都堀川で京染の店を老父と…

キクとイサム('59) 今井 正 <明治女とガキ大将の突破力――「差別の前線」を突き抜けて>

小学校の校庭で、一人の少年がバイクを乗り回している。それを見ていた肥満気味の少女。彼女は「いいバイクだな。ちょっと見せろ」と言って、その少年からバイクを奪って、それを今度は自分で乗り回していく。 「姉ちゃんのバカ野郎!クソったれ!」 「俺ん…

野性の少年('69)  フランソワ・トリュフォー <「『愛』による『教育』」の成就 ――「父性」と「母性」の均衡感のある教育的提示>

1 「アヴェロンの野生児」の発見 1797年に、南フランスの森深くで、猟師たちによって発見され、生け捕りにされた裸の少年がいた。 所謂、「アヴェロンの野生児」である。 程なく、パリの国立聾唖学院に預けられ、獣と戦った痕を示す15か所の傷を確認…

つぐない('07)  ジョー・ライト <「贖罪」の問題に自己完結点を設定することへの映像的提示>

「1930年代、戦火が忍び寄るイギリス。政府官僚の長女セシーリアは、兄妹のように育てられた使用人の息子、ロビーと思いを通わせ合うようになる。しかし、小説家を目指す多感な妹ブライオニーのついたうそが、ロビーに無実の罪を着せ、刑務所送りにして…