2011-03-25から1日間の記事一覧

大地の子守歌('76)  増村保造 <大地に耳をそばだてて>

大地の声を子守にして生きてきた十三歳の少女の人生が、祖母の死によって激変する。 「人を信じるな」という祖母の戒めは、自分が亡き後の孫娘の将来を案じての教えだったが、「海を見せてやる」という人買いの狡猾な口車に乗せられて、少女は瀬戸内の小島に…

ソフィーの選択('82) アラン・パクラ  <もう選択したくない人生>

1 闇の奥に封印された過去 ―― 本作のストーリーラインを簡単に追っていこう。 アウシュヴィッツ(オシフィエンチム)を体験した、ソフィーという名の一人のポーランド女性がいて、彼女と同棲する、ネイサンというユダヤ人の妄想性分裂病(統合失調症)者が…

あにいもうと('53)  成瀬巳喜男 <「見過ぎ世過ぎを立てていく女たち」と、「甲斐性、意気地のない男たち」の現在性>

「あにいもうと」の人格を相対化させた、さんの存在が何より重要だが、この劣化した家族の人格的ストレッサーとも言うべき、もんの存在の尖り方から書いていく。 彼女の存在の尖り方は、ラスト30分の中で展開されている。 「あにいもうと」の大立ち回りの…

ミシシッピー・バーニング('88) アラン・パーカー   <「近接してくる者たちへの恐怖」が暴走するとき>

「フリーダム・サマー」と呼ばれる、1964年夏の公民権運動家たちの熱心な活動がアメリカ南部で展開された。その中に、北部から来た若い三人の活動家がいた。二人はユダヤ人で、一人は黒人だった。 ミシシッピー州に入った彼らは、スピード違反の容疑で拘…