2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧
1 「本当に殺したい奴、殺してねぇんかね?」 一人の中年男と、一人の老婆が歩いている。 中年男と言っても、37歳の壮年である。 その名は榎津巌(えのきづいわお)。 専売公社の二人の集金員を殺害した殺人犯として、全国指名手配中の男である。 その男…
1 「恋愛の王道」をいく、切なくも、紆余曲折の経緯をトレースする物語 そこかしこに牧歌的風景が広がる、18世紀末のイングランドの片田舎。 その日、初老期にあるベネット夫妻と、適齢期を迎えた5人の娘たちばかりで構成されるベネット家での話題の中心…
1 〈生誕〉への無限抱擁=「大いなる母性」のうちに収斂させていく手品の「生命線」 人間が普通に抱えている不幸や心の闇を大袈裟にデフォルメし、その部分だけを持つ者たちの、その部分だけをマキシマムに特化させ、些か映画的統合性が脆弱な物語のうちに…
1 容易に癒えない対象喪失の悲嘆の風景を晒す危うさ 私が観た、この監督の作品の中で、紛れもなく最高傑作。 主題提起力・構成力、共に問題なく、何よりも優れて映画的だった。 あまりに痛々しくも、辛いテーマを感傷に流すことなく、少年の自我の形成過程…
1 絶望的な旅に打って出た男の危機一髪 広告代理店を経営するロジャー・ソーンヒル(以下、ロジャー)が、陰謀組織・バンダム一味の二人の男によって、ニューヨークのホテルから広壮な邸宅に連れ出された。 カプランという男と勘違いされたためである。 連…