#その他映画

めまい(‘58) アルフレッド・ヒッチコック <「サプライズ」に振れずに、「サスペンス」を選択した構成力の成就>

1 恐怖のルーツを突き抜けた反転的憎悪が、倒錯的に歪んだ愛の呪縛を解き放つ男の物語 これは、反転的憎悪が恐怖のルーツを突き抜けた瞬間に、倒錯的に歪んだ愛の呪縛から解き放たれていく男の物語である。 同時にそれは、消せない愛の残り火を駆動させた挙…

映画の中の決め台詞  その1  〈欺瞞を撃ち抜く台詞集〉

序 「“機銃を浴びせて手当てする”―― 欺瞞だ。見れば見るほど、欺瞞に胸がムカついた」 「 友愛外交というのは難しいテーマではありますが、それを現実に行ってきたのがヨーロッパ、EU(欧州連合)であることを考えたときに、敵視し合っていたフランスとド…

映画史に残したい「名画」あれこれ  外国映画編(その4)

フルメタル・ジャケット(スタンリー・キューブリック) 本作の物語構造は、とても分りやすい。それを要約すれば、こういう文脈で把握し得るだろう。 「殺人マシーン」を量産する「軍隊」の、極めて合理的だが、それ故に苛酷なる短期集中の特殊な新兵訓練を…

映画史に残したい「名画」あれこれ  外国映画編(その3)

戦場のピアニスト(ロマン・ポランスキー ) この映画の凄いところは、以下の5点のうちに要約できると思う。 その1 観る者にカタルシスを保証する、ハリウッド的な「英雄譚」に流さなかったこと。 その2 人物造形を「善悪二元論」のうちに類型化しなかっ…

映画史に残したい「名画」あれこれ  外国映画編(その2)

セントラル・ステーション(ヴァルテル・サレス) 本作は、善悪の感覚に鈍磨した中年女性が、父を捜し求める少年との長旅を通して、感覚鈍磨した自我が、本来そこにあったと思わせる辺りにまで、曲接的に心情変容していくプロセスを、精緻で説得力のある映像…

映画史に残したい「名画」あれこれ  外国映画編(その1)

映画のランク付けを好まない私だが、邦画の「ベストワン」を「浮雲」(1955年製作)に決めているように、外国映画でも、紛れもなく、「ベストワン」と思わせる映像がある。 ジェリー・シャッツバーグ監督の「スケアクロウ」(1973年製作)である。 …

映画史に残したい「名画」あれこれ  邦画編(その2)

偽れる盛装 (吉村公三郎) 恐らく、このような役柄を演じさせたら、京マチ子の全人格が放つ圧倒的存在感は、数多の女優の姑息な「演技力」が嵩(かさ)に懸かって来ても、それらを蹴散らす「身体表現力」において一頭地を抜くものがある。 近代的自我を保持…

映画史に残したい「名画」あれこれ  邦画編(その1)

ここでは、このような作品を特定的に拾い上げた私の「名画」を、個人的感懐を添えながら、順位をつけることなく、アトランダムに列記していきたい。 因みに、成瀬巳喜男の作品が多いのは、私にとって、成瀬巳喜男こそ最高の映画監督であると考えているからで…