「法の正義」を拠り所に、絶望的な孤独の戦いを繋ぎ切った男の物語

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1  南北戦争という壮絶な内戦のあとで
 
 
50州と「コモンウェルス」(プエルトリコ・北マリアナ諸島の「米国自治連邦区」で、海外領土の保護領)から成る連邦共和国アメリカ合衆国史上最大、且つ、唯一の大規模な内戦である南北戦争の悲惨さは、5万人とも言われる市民の死亡を含め、総計で、90万人近い犠牲者を出した事実によって確認できるだろう。
 
この南北戦争の根柢にったのは、生産効率性が悪いという理由のみで、黒人奴隷制への反対を標榜し、1854年に結成された共和党に結集する商工業が中心であった、当時の北部資本家たち奴隷制度を採用しなかったのに対して、広大な農地に大量の資本を投入し、奴隷の労働力に依存、綿花をイギリスに輸出するという、亜熱帯地域に耐え得る綿花プランテーションという生産形態が、奴隷制という生産様式に最も好都合だった農業中心の南部州との経済構造・社会構造・政治風土の違いであった。
 
米英戦争(1812年)によって急速な工業化が進展していたという経済的背景があり、工業経済化を進めることで、工場労働者としてのみ黒人を求め、奴隷制度を不要とする北部と、英国への綿産業向け原料供給地としての農業経済を継続し、自由貿易を志向する南部との経済的風景は、別々の国と思えるほどの分断化された状況下にあって、アメリカ全体を統合する意思を持つリンカーンの大統領選の勝利を契機に、合衆国からの分離独立を辞さない南部諸州と、連邦維持を目指す北部諸州との対立が尖鋭化し、この根源的な対立が、近代国家の代名詞である「国民国家」のイメージが希薄な「アメリカ」(現在、軍事・外交が連邦政府によって仕切られているので明瞭な「国民国家」)という、地方の開拓共同体が連合的に形成された「連邦国家」の裸形の相貌(そうぼう)である。
 
1861年から1865年にかけて起こった南北戦争の結果、国力に勝る北部が「南部連合」(脱退を宣言した7州=ミシシッピフロリダ・アラバマジョージアルイジアナ・テキサス・サウス・カロライナ&4州)に勝利し、合衆国は南部諸州の離脱阻止・連邦への再統合を可能にした、「国民国家」として発展を続けることになるに至った。
 
軍人政治家・ジェファソン・デーヴィスを大統領とする、「アメリカ連合国」の樹立を宣言した「南部連合アラバマの州都・モントゴメリで結成を宣言し、更に4州(バージニア初め、ノースカロライナアーカンソーテネシー)が加わったものの、サウスカロライナ州チャールストン(南部の建築物で有名な観光スポット)の「サムター要塞の戦い」(1861年4月)で戦闘の火蓋が切られるが、戦局が逆転し、北軍が勝利した「ゲティスバーグの戦い」(1863年7月)という史上最大の激戦を経由し、1965年4月の南軍降伏によって消滅した。
 
―― 以下、南北戦争直後の不安定な政治・社会状況の只中で、南軍の残党によってリンカーン大統領の暗殺が惹起し、この暗殺に関わったとされるメアリー・サラット(女性初の死刑囚)の史実をベースに、この歴史的事件をリアルに描いた映画・「声をかくす人」について言及したい。
 
但し、「声をかくす人」については「人生論的映画評論・続」で既に書いているので、ここでは、その批評を切り取って、再構成した一文を掲載する
 
「声をかくす人」の監督は、ハリウッドの傘下に属していないインディーズ・ムービーを製作するサンダンス映画祭を開催し、「普通の人々」・「リバー・ランズ・スルー・イット」・「クイズ・ショウ」などで、出色の演出力を見せたロバート・レッドフォード
 
ハリウッドNo.1の「全身・リベラル」の良心的映画人で、その作品には「遊び」が希薄で、生真面目過ぎるほどの作家精神は、「声をかくす人」でも本領を発揮していた。
 

時代の風景  「 『法の正義』を拠り所に、絶望的な孤独の戦いを繋ぎ切った男の物語」よりhttp://zilgg.blogspot.jp/2018/04/blog-post_30.html