2012-08-07から1日間の記事一覧
1 視線を同化した存在性のうちに、強い紐帯をも強化させた瞬間の炸裂 「恐怖突入」を回避して、最後はファンタジーに流れ込んだ、「誰も知らない」(2004年制作)の物語の制約を突き抜けて、本作は丸ごとファンタジー映画になってしまった。 正確に言え…
序 奇麗事で塗りたくられた気恥ずかしさ 少なくとも私にとって、ここまで奇麗事で塗りたくられた映画を見せつけられたら、あまりの気恥ずかしさで、「勝手にやってくれ」と言いたくなる種類の典型的な映画。 しかし、本作で扱われた歴史的事実についての誤っ…
1 「純真無垢」の記号が「抑圧」の記号に反転するとき 物語の梗概を、時系列に沿って書いておこう。 1913年の夏。 北ドイツの長閑な小村に、次々と起こる事件。 村で唯一のドクターの落馬事故が、何者かによって仕掛けられた、細くて強靭な針金網に引っ…
序 カントリーボーイの善良感と、下肢に障害を持つ男の絶対孤独の哀しさ 原題は「Midnight Cowboy」。早川文庫で、原作もある。邦題名は、そのものずばりの「真夜中のカーボーイ(正確には、カウボーイ)」。 この映画をその昔、名作専門館で観たときの感動…
1 「想像力の戦争」を巡る知的過程を開く映像 様々な想像力を駆り立てる映画である。 説明的な映像になっていないからだ。 遠慮げなナレーションの挿入も、映像の均衡性を壊していない。 観る者に、本作の余情を決定付けた、ラストナレーションに違和感なく…