2012-05-14から1日間の記事一覧

「手に入れたものの小ささ」と「失ったものの大きさ」との損益分岐点の攻防戦

1 「競馬の醍醐味」への「スノッブ効果」的侵入 「ギャンブル依存症」と言ったら大袈裟になるが、私はかつて競馬三昧の生活を送っていたことがあった。 遥か成人に届く前の青臭い頃だ。 アルバイトで知り合った年長の先輩たちから、「競馬の醍醐味」を教え…

「目立たない程度に愚かなる者」の厄介さ

私たちは「「程ほどに愚かなる者」であるか、殆んど「丸ごと愚かなる者」であるか、そして稀に、その愚かさが僅かなために「目立たない程度に愚かなる者」であるか、極端に言えば、この三つの、しかしそこだけを特化した人格像のいずれかに、誰もが収まって…

「脆弱性」―― 心の風景の深奥 或いは、「虚偽自白」の心理学

1 極限的な苦痛の終りの見えない恐怖 こんな状況を仮定してみよう。 まだ眠気が残る早朝、寝床の中に体が埋まっていて、およそ覚醒とは無縁な半睡気分下に、突然、見たこともない男たちが乱入して来て、何某かの事件の容疑事実を告げるや、殆ど着の身着のま…

太陽はひとりぼっち('62) ミケランジェロ・アントニオーニ  <ラスト9分間に及ぶ、無言のシークエンスの決定力>

1 軟着点の見えない話し合いの後で 原題は「L’ECLIPSE」。 「月食」、「日蝕」という意味である。 カンツォーネの代表的女性歌手である、イタリアのミーナ・マッツィーニが歌う、軽快な邦題通りの主題歌から、クレジットタイトルが刻まれる途中で、唐突に、…

欲望('66) ミケランジェロ・アントニオーニ <関係の不毛という地平にまで絶望的な稜線を伸ばしてきて>

1 「広場の孤独」の世界に置き去りにされて この知的刺激に充ちた本篇において最も枢要な映像構成点は、堀田善衞の小説(「広場の孤独」)の主人公のように、その人格像は決して誠実とは言えなかったが、「事件」(「殺人事件」による公園の「薮の中」に横…