#練習用

人生論的映画評論・続あの夏、いちばん静かな海。('91) 北野武 <「台詞なき世界」、「生命線としての音楽」、「死の普遍性」について>より

<「台詞なき世界」、「生命線としての音楽」、「死の普遍性」について> 1 「台詞なき世界」について この映画のキーワードは3つある。 「台詞なき世界」、「生命線としての音楽」、「死の普遍性」である。 まず、「台詞なき世界」について。 「障害者は…

季節のアルバム 「埋め尽くされた春の彩りが『全生園』を包み込む」 2019・4

今年も、多磨全生園に春がきた。 今年の全生園もまた、サクラの美しいラインが群れを成し、都内の名所に負けないように、園全体を包み込んでいた。 ライムグリーンの彩りが鮮やかな広場にある施設の中に、お食事処「なごみ」がある。 映画「あん」を契機に、…

「声を上げる勇気」 ―― 「性奴隷」にされたナディア・ムラドの終わりなき戦争

1 世界は何もできない ―― 一切を奪われてしまった女性の屈辱的で絶望的な運命 一人の女性がいる。 かつてベルギー領だった赤道直下のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で、暗殺の危機に遭遇しながら、コンゴ内戦でレイプ被害の女性たちを治療し続けたデニス・…

道理を超えた矛盾と齟齬を描き切った、「掟」と「掟」の衝突の物語

1 文革の被害少年と加害少年が、手を握り合って立ち上げた記念碑的映像 映画「黄色い大地」は、私にとって「さらば、わが愛/覇王別姫」と並んで、陳凱歌(チェン・カイコー)監督の秀作の中で、心が震えるような感銘を覚えた作品である。 これほどの作品を…

「幕末」とは何だったのか

1 「黒船」がやって来た 大老・井伊直弼が暗殺され、明治維新へと猛(たけ)り立っていく激動の歴史の起点となった、世に言う「桜田門外の変」。 一切は、1853年に起こった「黒船来航」に淵源(えんげん)する。 「アメリカ合衆国大統領国書」が幕府に…

境界を超えていく芸術表現の仮想体験

1 映像批評の規範性 映像が提示したものを、観る者は想像力を駆使して読み解いていく。 映像が提示したものと、提示されたものについて想像力を駆使する者が、観念の世界で結ぶ幻想の中枢を「批評の前線」と呼んでもいい。 「批評の前線」にあって、想像力…

人間の尊厳とは、自らの〈現存在性〉と折り合うことである

1 尊厳的な価値を自らのうちに見出せない〈現存在性〉の奥深い闇 レコンキスタ(イスラム教徒からのキリスト教徒のイベリア半島奪回運動)以降、国民の約70%がローマ・カトリック教のスペインに、かつて、ラモン・サンペドロという人物がいた。 Wikipedi…

劣等コンプレックスを乗り越えた国王 ―― その「攻撃的大義」への果敢なる飛翔

1 「吃音症」は「吃音⇒緊張⇒吃音症状の増幅」という負の連鎖が常態化する言語障害である 知力・言語能力が保持されながら、流暢(りゅうちょう)に「発話」ができない吃音(きつおん)は、「吃音回避」のために膝を叩いたり、口を歪めて「発話」したりする…

人類は滅亡するのか

1 「どうせ、人類が滅びるんだから」 ―― そう思えば、かえって気持ちが楽になる 「2012年人類滅亡説」が、真しやかに吹聴されていた。 「マヤ予言」のことである。 2012年12月21日から12月23日頃に、「人類が滅亡する」という予言だったが…

集団スリーピング

世の中に危機が目前に迫っているのに、一向にそれに対処しない人がいる。 洪水が足元にまで及んでいるのに、まだ大丈夫だと考える人の発想を支配しているのは、決して単純な楽天思考ではない。 かの人々は、地元の河川の氾濫で町に水が溢れても、「我が家は…