陽春を歩く(その2)

 小金井公園 ―― さすがに国営昭和記念公園の広大な面積には及ばない(2分の1)が、日比谷公園の5倍近く、上野公園の1.4倍もある都立公園である。

 戦前から玉川上水沿いに咲く「小金井桜」として、その名を馳せてきた桜の名所は今も健在である。

 ソメイヨシノヤマザクラサトザクラカンヒザクラなど、1700本にも及ぶサクラの樹木が陽春を眩く染め上げて、まさに「光の春」と「気温の春」に相応しい絢爛たる風景美を作り出している。

 他の桜名所がそうであるように、この公園もまた、ソメイヨシノの満開時には、広い芝生は花見客の格好のスペースとなり、ぽかぽか陽気の格好の休日に恵まれたりすると、殆ど立錐の余地がない程のお花見風景を作り出している。

 だから私は、この時期にこの公園を訪れることは滅多にない。

 この公園の最大の「見せ場」の時期は、ソメイヨシノが終わり、花見客が疎らになる4月中旬以降であるというのが私の独断的解釈。

 2・26事件で暗殺された屋敷である高橋是清邸など、近代の歴史的な建造物を移築保存し、展示してある「江戸東京たてもの園」(旧称・武蔵野郷土館/有料)を除けば、この公園は無料開放のフリーゾーンなので、花見客の少ないこの時期に咲き誇る、私の好きなサトザクラの写真を撮るために訪園するのが恒例の撮影行になっている。

 恐らく、この公園のサトザクラは、都心のオアシスである新宿御苑と共に二大名所になっていると言っていい。

 サトザクラの満開時には新緑も美しく、紅白のサクラの密生度の高さは、それが散りザクラとなって、絨毯のように敷き詰めた風景美をも包括し、私にとって限りなく魅力的なビューポイントを提供してくれるのだ。

 何しろ、この小金井公園へのアクセスが容易なのである。

 清瀬の自宅前にある西武バスの停留所から、武蔵小金井行きのバスに乗って行けば、40分ほどで公園前まで、横着な我が身を運んで行ってくれるのである。

 都心には些か離れているが、この公園も含め、高尾や奥武蔵の花名所へのアクセスも容易であることが最高に良い。

 多摩地域の東北部に位置する、清瀬という静かな佇まいを見せる町に住んでいることの有り難さを、しみじみ感じ入っている次第である。

 
 
[ 思い出の風景   陽春を歩く(その2)  ]より抜粋http://zilgf.blogspot.com/2011/09/blog-post_13.html