風景への旅(花紀行)

 ここでは、青梅にある吉野梅郷と、「アジサイ寺」として名高い松戸本土寺が、私の最も愛着の深いビュースポット。

 紅梅の多い吉野梅郷は、字義通りの「桃源郷」と言っていい。

 最盛期には、殆ど信じ難き美しさを見せるので、毎年のように通ったものである。

 また、松戸本土寺は「アジサイ寺」として、多くの拝観者(観光客)が引きも切らないが、それと同様に、「モミジ寺」としての魅力にも溢れていて、広葉樹のモミジが、落葉の前に葉の色を劇的に変容させる化学作用の見事さは、まさに、紅葉名所としての面目躍如と言ったところである。

 そして小石川植物園
 
 「元々は東京大学が開設した施設ではなく、江戸幕府によって開園された、小石川御薬園であった。幕府は、人口が増加しつつあった江戸で暮らす人々の薬になる植物を育てる目的で、1638年に麻布と大塚に南北の薬園を設置したが、やがて大塚の薬園は廃止され、1684年(貞享元年)、麻布の薬園を5代将軍徳川綱吉の小石川にあった別邸に移設したものがこの御薬園である。

 その後、8代徳川吉宗の時代になり敷地全部が薬草園として使われるようになる。1722年(享保7年)、将軍への直訴制度として設置された目安箱に町医師小川笙船の投書で、江戸の貧病人のための『施薬院』設置が請願されると、下層民対策にも取り組んでいた吉宗は江戸町奉行大岡忠相に命じて検討させ、当御薬園内に診療所を設けた。これが小石川養生所であり、 山本周五郎の連作短編小説『赤ひげ診療譚』や、この作品を映画化した黒澤明監督作品の『赤ひげ』は、養生所を舞台とした医師の物語である」

 これは、小石川植物園、正式には「東京大学大学院理学系研究科附属植物園」についてのWikipediaの解説の一文。

 小石川養生所=「赤ひげ」のイメージがあるから、小石川植物園には大学附属の研究施設という、どこか厳かな雰囲気が感じられるのだろうか。

 然るに、私の知ってる小石川植物園は春季限定だが、そこで限定された陽春に炸裂する風景美は、ここを訪れる初見者の多くを驚かすだろう。

 新宿御苑のような、視界が開けた広々とした公園のイメージとは些か違って、小石川後楽園がそうであるように、ここには拝観者の散策コースの中に季節が彩る風情もあって、それがこの植物園懐の深さを感じさせるのである。

 陽春の季節を炸裂させるのは、圧倒的にボリューム感のある各種のサクラの洪水。

 そして、ここで紹介するショカッサイや菜の花などの花が咲き誇る風景は、どこからでも切り取れる構図を成していて、まさに春爛漫の表現力が都心の一角を占有しているのである。

 東京は美しい。

 この言葉を、私は自分の写真ブログで繰り返し書いきたが、陽春の季節に小石川植物園を訪れた者なら実感せざるを得ないだろう。(トップ画像は、小石川植物園のサクラ)

 
[ 思い出の風景  風景への旅(花紀行)   ]より抜粋http://zilgf.blogspot.com/2011/08/blog-post.html