1 「青春の海」の求心力 ―― プロットライン①
陶磁器配達の仕事に追われる一人の若者がいる。
彼の名は、ハリー。
彼は奔放な我がまま娘と出会うことで、その生活に変化を来たしていく。
彼女の名は、モニカ。このとき、17歳だった。
純粋な青年、ハリーと出会うことで、モニカはそれまでにない異性への思いが生まれていく。
陶磁器配達の仕事に追われる一人の若者がいる。
彼の名は、ハリー。
彼は奔放な我がまま娘と出会うことで、その生活に変化を来たしていく。
彼女の名は、モニカ。このとき、17歳だった。
純粋な青年、ハリーと出会うことで、モニカはそれまでにない異性への思いが生まれていく。
決して豊かではないモニカは、父と喧嘩したことで家出し、同様に、陶磁器配達の仕事への遅刻などが原因で、ハリーもまた家出するに至った。
ストックホルムの夏の陽光を存分に浴びる快感を求めて、二人は、ハリーの父が所有するモーターボートでの非日常の生活に入っていったのである。
非日常の日常下のボート生活を謳歌する、二人の会話。
「僕はいつも孤独だった。僕が5歳のとき、母が病気になり、僕が8歳のとき死んだんだ。それで親父は少し変になり、無口になった。僕らは毎晩、椅子にじっと座っているだけで、話をしない」
「私は違うわ。家族がすごく多くて、チビはうるさいし、物は壊すし、パパは酔って外から帰って来て、大声を上げて絡むの。可笑しな人間なの」
「君も僕も同じだ。僕は夜、詰め込み勉強をしようと考えた。勉強を続ければ、エンジニアになれる。僕はエンジンが好きだ。親父のボートのエンジンを直した」
「技師になるなら、私たちは結婚できるわね」
ストックホルムの夏の陽光を存分に浴びる快感を求めて、二人は、ハリーの父が所有するモーターボートでの非日常の生活に入っていったのである。
非日常の日常下のボート生活を謳歌する、二人の会話。
「僕はいつも孤独だった。僕が5歳のとき、母が病気になり、僕が8歳のとき死んだんだ。それで親父は少し変になり、無口になった。僕らは毎晩、椅子にじっと座っているだけで、話をしない」
「私は違うわ。家族がすごく多くて、チビはうるさいし、物は壊すし、パパは酔って外から帰って来て、大声を上げて絡むの。可笑しな人間なの」
「君も僕も同じだ。僕は夜、詰め込み勉強をしようと考えた。勉強を続ければ、エンジニアになれる。僕はエンジンが好きだ。親父のボートのエンジンを直した」
「技師になるなら、私たちは結婚できるわね」
この会話の流れで、モニカは妊娠したことをハリーに告げ、その喜びを、ハリーはこう結んだ。
「僕はすぐにも家に帰り、働いて準備する。君はまともな食事が必要だ」
根が真面目なハリーの現実的な反応に対するモニカの答えは、刹那的で、現実遊離なものだった。
「嫌よ。私は帰らないわ。この夏はこうしていたいの。ハリー、あんたのように良い人は初めてよ」
ここで、ハリーは噛んで含めるように話した。
「モニカ。二人で本当の人生を送ろう。僕らは気が合っている。勉強して働けば、うんと稼げて、僕らは結婚できる。そして、洒落た家に住み、物を揃え、僕たちは生まれてくる子と・・・」
ハリーの真摯な言葉がどこまで受容できたか疑わしいような、モニカの延長されたイメージの世界が繋がれた。
「そうよ。私は家で夕食の支度をし、日曜には子供たちを連れて散歩よ。私は家で子供の世話をし、奇麗な服を着て外出するわ」
「何もかもうまくいくよ。僕らはいつでも一緒だ」
「私たち二人だけよ」
まもなく、二人は食糧不足に苦しむようになり、モニカは民家に押し入り、窃盗を企てるが、失敗した挙句、逃亡した。
モニカの行動に同調しなかったハリーは、戻って来たモニカと口論するに至ったが、「世間」と接続するときの二人の意識の差は歴然としていた。
翌朝のこと。
「楽しい夏だったよ。だが、何もかも終わった」とハリー。
「また町に帰るなんて…映画の夢を追ったのが、私たちの間違いよ」とモニカ。
「いや、僕らの夢だった」とハリー。
ボート生活を終え、町を目指して寄港するボートのデッキ上で、暗鬱な表情のモニカの眼光が濁っていた。
「青春の海」との距離が遠のいていく、そんな少女の心理を、暗鬱な音楽が拾っていく。
「町が近づいて来た・・・」とモニカ。
「負けはしないぞ。皆に見せてやる。僕はこれから働く」
19歳のハリーの強い覚悟だけが、海上で静かに括られた。
「僕はすぐにも家に帰り、働いて準備する。君はまともな食事が必要だ」
根が真面目なハリーの現実的な反応に対するモニカの答えは、刹那的で、現実遊離なものだった。
「嫌よ。私は帰らないわ。この夏はこうしていたいの。ハリー、あんたのように良い人は初めてよ」
ここで、ハリーは噛んで含めるように話した。
「モニカ。二人で本当の人生を送ろう。僕らは気が合っている。勉強して働けば、うんと稼げて、僕らは結婚できる。そして、洒落た家に住み、物を揃え、僕たちは生まれてくる子と・・・」
ハリーの真摯な言葉がどこまで受容できたか疑わしいような、モニカの延長されたイメージの世界が繋がれた。
「そうよ。私は家で夕食の支度をし、日曜には子供たちを連れて散歩よ。私は家で子供の世話をし、奇麗な服を着て外出するわ」
「何もかもうまくいくよ。僕らはいつでも一緒だ」
「私たち二人だけよ」
まもなく、二人は食糧不足に苦しむようになり、モニカは民家に押し入り、窃盗を企てるが、失敗した挙句、逃亡した。
モニカの行動に同調しなかったハリーは、戻って来たモニカと口論するに至ったが、「世間」と接続するときの二人の意識の差は歴然としていた。
翌朝のこと。
「楽しい夏だったよ。だが、何もかも終わった」とハリー。
「また町に帰るなんて…映画の夢を追ったのが、私たちの間違いよ」とモニカ。
「いや、僕らの夢だった」とハリー。
ボート生活を終え、町を目指して寄港するボートのデッキ上で、暗鬱な表情のモニカの眼光が濁っていた。
「青春の海」との距離が遠のいていく、そんな少女の心理を、暗鬱な音楽が拾っていく。
「町が近づいて来た・・・」とモニカ。
「負けはしないぞ。皆に見せてやる。僕はこれから働く」
19歳のハリーの強い覚悟だけが、海上で静かに括られた。
(人生論的映画評論/不良少女モニカ('53) イングマール・ベルイマン <自我の未成熟な女の変わらなさを描き切った圧倒的な凄味>)より抜粋http://zilge.blogspot.com/2010/05/53.html