タイレル社の遺伝子工学技師ののセバスチャンに、ネクサス6型、ロイ・バティは、タイレル博士との接見を求めて実現の運びとなった。
タイレル博士とロイ・バティとの、根源的な会話が開かれた。
「長生きしたいんだよ、おやじ」
この率直なロイ・バティの言葉に見え隠れているのは、「父」であるタイレルへの甘えの感情である。
しかし、「父」であるタイレルからの反応は、科学者の範疇を逸脱するものではなかった。
「無理だな。有機体のシステムを変えることは命取りだ。生命コーティングは変えられない。外部から干渉を受けた細胞は、ネズミが沈没する寸前の船から逃げ出すように、パニックを起こして命を絶つ。EMS(変異誘発物質・筆者注)で突然変異を起こした細胞は、有毒なウイルスを作り出した。被験者は即死だ」
以下、根源的な会話の内に、人間の傲慢さが張り付いていく。
「細胞活動を抑えるたんぱく質は?」
「やはり、細胞再生の際に、突然変異を誘発する。変異したDNAはヴィールスを作り出すんだ。君らは完全だよ」
「寿命が短い」
「明るい火は早く燃え尽きる。君は輝かしく生きて来たんだ。君を誇りに思ってる」
「色々、悪いことをした」
「業績も挙げた」
「生物工学の神が呼んでるぞ」
この「神学論争」の虚しさを感知したロイ・バティは社長の眼を潰し、殺害するに至った。(完全版)
そして、セバスチャンの殺害があり、プリスの死が続く。
最後に、ブレードランナーであるデッカードとロイ・バティとの死闘が延々と描かれていくのだ。
しかし、最強の攻撃ロボットであるロイ・バティは、とうていブレードランナーが敵う相手ではなかった
「恐怖の連続だろう。それが、奴隷の一生だ」
これは、超高層ビルの屋上の縁にしがみ付く、デッカードへのロイ・バティの決定力のある言葉。
その直後、ビルから落下しそうになったデッカードを、ロイ・バティは片腕で掴み上げて助けたのである。
「お前ら人間には、信じられぬものを、俺は見てきた。オリオン座の近くで燃えた宇宙船や、タンホイザー・ゲート(超高速を越えるゲート・筆者注)のオーロラ・・・そういう思い出も、やがて消える。時がくれば、涙のように。雨のように・・・その時がきた」
戦闘用レプリカントであるロイ・バティが、一瞬にして固まって死んでいく現実の恐怖を凝視しながら、デッカードは心の中で呟いた。
「なぜ俺を助けたのか。多分、命を大事にしたのだろう。それが自分の命でなくても。俺の命でも。彼は自分のことを知りたがった。“どこから来て、どこへ行くのか。何年生きるのか”人間も同じなのだ」(モノローグ)
全てが終焉した瞬間だった。
タイレル博士とロイ・バティとの、根源的な会話が開かれた。
「長生きしたいんだよ、おやじ」
この率直なロイ・バティの言葉に見え隠れているのは、「父」であるタイレルへの甘えの感情である。
しかし、「父」であるタイレルからの反応は、科学者の範疇を逸脱するものではなかった。
「無理だな。有機体のシステムを変えることは命取りだ。生命コーティングは変えられない。外部から干渉を受けた細胞は、ネズミが沈没する寸前の船から逃げ出すように、パニックを起こして命を絶つ。EMS(変異誘発物質・筆者注)で突然変異を起こした細胞は、有毒なウイルスを作り出した。被験者は即死だ」
以下、根源的な会話の内に、人間の傲慢さが張り付いていく。
「細胞活動を抑えるたんぱく質は?」
「やはり、細胞再生の際に、突然変異を誘発する。変異したDNAはヴィールスを作り出すんだ。君らは完全だよ」
「寿命が短い」
「明るい火は早く燃え尽きる。君は輝かしく生きて来たんだ。君を誇りに思ってる」
「色々、悪いことをした」
「業績も挙げた」
「生物工学の神が呼んでるぞ」
この「神学論争」の虚しさを感知したロイ・バティは社長の眼を潰し、殺害するに至った。(完全版)
そして、セバスチャンの殺害があり、プリスの死が続く。
最後に、ブレードランナーであるデッカードとロイ・バティとの死闘が延々と描かれていくのだ。
しかし、最強の攻撃ロボットであるロイ・バティは、とうていブレードランナーが敵う相手ではなかった
「恐怖の連続だろう。それが、奴隷の一生だ」
これは、超高層ビルの屋上の縁にしがみ付く、デッカードへのロイ・バティの決定力のある言葉。
その直後、ビルから落下しそうになったデッカードを、ロイ・バティは片腕で掴み上げて助けたのである。
「お前ら人間には、信じられぬものを、俺は見てきた。オリオン座の近くで燃えた宇宙船や、タンホイザー・ゲート(超高速を越えるゲート・筆者注)のオーロラ・・・そういう思い出も、やがて消える。時がくれば、涙のように。雨のように・・・その時がきた」
戦闘用レプリカントであるロイ・バティが、一瞬にして固まって死んでいく現実の恐怖を凝視しながら、デッカードは心の中で呟いた。
「なぜ俺を助けたのか。多分、命を大事にしたのだろう。それが自分の命でなくても。俺の命でも。彼は自分のことを知りたがった。“どこから来て、どこへ行くのか。何年生きるのか”人間も同じなのだ」(モノローグ)
全てが終焉した瞬間だった。
(人生論的映画評論/「ブレードランナー('82) リドリー・スコット <人間とヒューマノイドの鑑別テストを必要とする、大いなる滑稽さ>」より抜粋http://zilge.blogspot.com/2010/03/82.html