#その他文化活動

「現代版村八分」 ―― その人権侵害の破壊力

1 「不浄感」を沁み込ませた「異物」に対する排斥行為 ―― 「村八分」とは何なのか ルール違反の特定他者を「仲間」として受容せず、「余所者」(よそもの)として排斥(はいせき)する行為 ―― これが、村落などの地域社会で行われたら、通常、「村八分」と…

公権力の行使にとって、LGBTの知識がないことは許されない

1 「ストローマン」の詭弁に言い逃れする「文芸評論家」の致命的脆弱性 事の発端(ことのほったん)から書けば、杉田水脈(みお・敬称略)が然(しか)るべき記者会見を開き、基礎生物学の重要な研究領域・「発生生物学領域」の教養レベルに届きようがない…

「先入観」の心理学

1 人間は「先入観」なしでは生きていけない 「物自体」(ものじたい)という哲学概念がある。 カント哲学の基本概念であるが、簡単に言えば、人間が経験的に認識できる「現象」に対して、決して認識し得ない「本体」のことを言う。 人間が思惟(しい)し得…

LGBTという、押し込められた負の記号を突き抜ける肯定的な自己表現

1 カミングアウトを不要とする社会を、いかに実現するか ―― 所感として LGBTについて、今、ようやく一般的な理解が進みつつある。 様々な啓発本が出版され、LGBTの人権問題を解消し、社会的包摂(ほうせつ)の立法化が進む国際的潮流に呑み込まれる…

セーレムで何が起こったか

1 「私は魂を売った人間だが、名前は私にくれ!」 極限状態の渦中での、プロクター夫婦の壮絶な会話から起こしていく。 「罪を認めたら許される。お前は、どう思う?・・・告白を?」 「あなたが決めて」 「お前の望みは?」 「あなたに任せます。でも生きて・・…

人はどのように男になり、女になっていくのか

1 「性分化」には4つの険しい関門がある ヒトの性が、XとYの性染色体によって規定される事実が瞭然(りょうぜん)としたのは、20世紀半ばに性染色体が発見されたからである。 この発見は、Y染色体の有無が性を決定し、Y染色体を持つ個体が男性であり…

人間とは何か

1 「欲望の稜線伸ばし」を捨てられないホモサピエンスの宿命 現在、並列して処理する部分の多いアルゴリズム(問題を解くための計算手法)を見つけ、これを複数のコンピューターを使用・実行・処理を可能にする高度な「並列処理」=「パラレル処理」を確保…

二人で選ぶ外国映画123選(アジア・オーストラリア・南米・ヨーロッパ篇)

アトランダムに選んだランキングなしの、主観的な「秀作」の抜粋である。 一般的に評価されている作品であっても、共に気に入った作品が前提条件なので、漏脱(ろうだつ)されている「秀作」が多くあるが、どこまでも、私たち夫婦の拘泥(こうでい)が強く…

「妬まず、恥じず、過剰に走らず」という「分相応」の「人生哲学」 ―― その突破力の脆弱性

1 「バランスの人生哲学」という「分相応主義」のイデオロギー 稲垣浩監督の「無法松の一生」という圧倒的に感動的な映画を観終わった後、私の意識をしばらく支配した言葉がある。 「分相応」(ぶんそうおう)という言葉である。 いつまでも私の脳裏に焼き…

「生者」は「死者」となり、移ろい過ぎ去ることなく、「永遠の詩人」として蘇る ―― イラン革命とは何だったのか

1 イラン革命とは何だったのか まるで、それは〈天〉と〈地〉がひっくり返ったような世界だった。 外部環境の劇的な体制転換=「レジームチェンジ」によって生まれた新体制は、多様化し、様々な差異を見せながら発展・進化してきたヨーロッパやアメリカ文化…

戦争における「人殺し」の心理学 ―― 「見える残酷」を如何に削り取っていくか

1 「社会主義共和国」を謳う、アメリカより遥かに「厄介な国」がミサイルの脅威をちらつかせて、我が国を包囲する アメリカが途轍(とてつ)もなく厄介な国に堕ちていったのは、日本に対する二度にわたる原爆投下であると、極めて主観的に私は考えている。 …

「忘れられた被害者」 ―― ロマ人が被弾した「ポライモス」の惨状

1 「ジプシー」と呼ばれる「劣等人種・ロマ」のルーツ 「パリの窃盗の5分の1はロマの仕業だ」 欧州において、「非定住者」・「怠惰者」のラベリングを貼られ、移動型民族・「ジプシー」の最大勢力である「ロマ」の集団に対する、「人権大国」フランスの、…

「トラもハエもたたく」 ―― 反腐敗キャンペーンの嵐が中国社会を覆い尽くしている

1 「中国一の金持ち村」 ―― 命を懸けた村民のバイタリティが弾け、大地を揺さぶり、奇跡をもたらす 「土豪」という言葉がある。 「日中・中日辞典」では「地方の悪徳ボス」と説明されているが、近年、その「土豪」が中国で話題になっている。 「成金」への…

「丸刈り」にされた女 ―― 尊厳を奪回する「覚悟の帰郷」

1 「性的な対独協力者」に対する「丸刈り」という狂気の沙汰 第二次世界大戦期のドイツとフランスにおいて、女性に対して行なわれた「丸刈り」という凄惨な現象がある。 髪を刈るという行為自体は男女に拘らず、古代からあった。 古代からあった「丸刈り」…

「リベラル」とは、個人の権利の行使が他人の権利の行使を妨げない態度の様態である

1 テストステロンは「勝ちのホルモン」である 筋肉の強度・性機能の維持・太い骨格・逞しい身体に表現されているように、人間の闘争心の原動力となっている男性ホルモン ―― それが、「勝ちのホルモン」と言われるテストステロンである。 しかし、「幸福感」…

「棄老伝説」の本質は反転的な「敬老訓話」である

1 伝承者が絶えれば、「昔話」のレベルの「物語」は変容する 近代社会成立以前に形成されていた、成員の農業生産の自給的生産体制による地縁的相互扶助の共同体。 単位集団の自立性が高く、この閉鎖的・自足的な共同体は、元々、鉄器の普及によって灌漑(か…

「マタニティブルー」 ―― その神経症状の破壊力

1 成熟した自我から「母性」が生まれる ―― 「児童虐待」という闇の深さ WHO(世界保健機関)の福祉プログラムの根幹になっているコンセプトに、「母性的養育の剥奪」という概念がある。 養育者による愛情に満ち溢れた世話を受ける機会を喪失(母性喪失)…

噂の心理学 ―― 或いは、セカンドレイブの包囲網の只中で闘うジャーナリスト

1 噂⇒デマの怖さを映画化した秀作 「噂の二人」という演劇ベースの映画がある。 アメリカの左派の劇作家・リリアン・ヘルマンの原作で、一度観たら忘れない、ウィリアム・ワイラー監督の秀作である。 粗筋を簡単に紹介すると、以下の通り。 ―― 学生時代から…

「健全な社会」は適度な「不健全な文化」を包摂する

1 「宗教国家」・アメリカの中枢に風穴を開けた男の物語 ラリー・フリントという男がいる。 赤面するほど過激なポルノ雑誌「ハスラー」(注1)を創刊し、「ポルノ王」を自称する実在人物である。 「カッコーの巣の上で」・「アマデウス」で知られる、ミロ…

「感情の氷河化」 ―― 「べニーズ・ビデオ」、その「分らなさ」という衝撃

1 観る者の「ミラーニューロン」の活動電位が鈍化し、少年への「感情移入」を遮断させる肌寒き風景 「ホラーもSFも、アドベンチャーも、自分が状況を支配できるという幻想を持つことから生まれる。監督は状況を支配できる。映画は監督の創作だから。観客…

ミヒャエル・ハネケ監督を全否定するシネフィルたちの性質(たち)の悪さ

1 「不快なハネケ」の「不快な映画」という捨て台詞の遣り切れなさ ミヒャエル・ハネケ監督の映画ほど物議を醸し、厭悪(えんお)される作品もないだろう。 「ファニーゲームを観た。リアル過ぎて最高に気分が悪くなった。なんだこれ、鬼畜。一生みないね。…

「戦場の性」 ―― 私たち人間に突き付けられた、あまりに重い恒久的課題

1 「ベルリン終戦日記―ある女性の記録」 ―― その壮絶なる問題提起 敗戦後の日本で、米軍が上陸した最初の10日間だけで、1336件のレイプ事件が発生した。 この数字が、神奈川県下のみでのレイプ犯罪であるという史実に震撼させられる。 この史実の信憑…

「武士道」とは、非生産階級としての武士階級の防衛的安全弁である

1 「武士道」は朱子学のイデオロギーに裏づけされつつ、進化していった 「御恩」と「奉公」の契約から成る主従関係に拠って成る、武士階級の倫理体系を、広義に「武士道」と呼ぶならば、この倫理体系の基盤が鎌倉時代に成立したと考えるのが常識である。 こ…

恐怖感が人間を守る

1 扁桃体は脳の警報装置である 「人間が進化的に作り出した必然的な感情」。 このような感情を、私たちは不安と呼ぶ。 不安感情は、「今・ここ」のみに生存するだけの他の動物には、殆ど見られない感情である。 動物の寿命は、人間の寿命である「生理的寿命…

「思うようにならない人生の極みのさま」 ―― 人生の真実を描き切った成瀬映画の真骨頂 その2

16 声を上げ、たじろがず、情を守り、誇りを捨てなかった女 ―― 映画「あらくれ」 この映画は、一言で言えば、「声を上げ、たじろがず、情を守り、誇りを捨てなかった女」の物語である。 実際、映像の中で、女(お島=高峰秀子)は声を上げ、主張し、自分の…

「思うようにならない人生の極みのさま」 ―― 人生の真実を描き切った成瀬映画の真骨頂

1 人間の運命の、多岐にわたるリアルの有りようをフィルムに刻み付けた映画監督 私はハッピーエンドの映画が嫌いだ。 「予定調和のハッピーエンド」 ―― こうなると、もうお手上げである。 人生が「予定調和」に流れていかないからこそ、人間の運命の、多岐…

「共食文化」の包括力

私たち人類の祖先は、相互の信頼関係を強化するために、食料分配という行為を利用し、仲間同士の親睦を深めていった。 そこで構築された多様な協力体制が、集団の堅固な関係を作り上げる基礎的役割を果たしたと言っていい。 「食料分配」という巧みな戦略は…

壊れゆく日々に、人は何ができるか  その2

1 「恐怖支配力」は不幸という集合的イメージを喰い尽くす 「明日」を考えることは、絶望の濃度を一日分深めるだけであり、「過去」を思うことは悔恨の念を増幅させるだけだった。 だから、私の想像力は、「今・このとき」の痛みを緩和する薬を飲むことであ…

壊れゆく日々に、人は何ができるか

1 神経が悲鳴を上げている。 今日という一日が、私の人生の全てである。 昨日もそうだった。 明日については、もう、私の予約はない。 今日と明日の間には、およそ、一年間にも及ぶような時間の隔たりがある。 だから、どうでもいいのだ。 今日というこの日…

一生を懸けた「仕事」を持つ男たちの物語

1 「俺のプロジェクト」を持つ男が、それを失った男の心に架橋していく 「そう。4千枚。皆、同じ場所の写真だ。俺のプロジェクトだ。一生を懸けた俺の仕事だ」 映画の中の、このセリフが大好きだ。 映画の名は「スモーク」。 1995年公開のアメリカ・日…